市場に定着するなど一定の成熟を見たハイパーコンバージドインフラ。ここへ来て2つのトレンドが新たに登場した。1つはサーバーとストレージを分離して、それぞれをスケール可能にする「Disaggregated HCI」(ディスアグリゲーテッド・ハイパーコンバージドインフラ)。そして、もう1つが「Kubernetes対応」です。
ハイパーコンバージドにもDockerとKuberntesの波
ストレージ内蔵のサーバーをネットワークで接続し、仮想化ソフトウェアを用いることでスケールアウトなサーバーとスケールアウトなストレージを実現するのが「ハイパーコンバージドインフラストラクチャ」です。
ハイパーコンバージドインフラの基本的な特長は、導入が容易ですぐに使い始めることができ、前述したようにスケールアウト可能なサーバーとストレージが容易に実現できるという点にあります。この5年で各ベンダーともこうした点について製品を十分に成熟させており、もちろんベンダーごとの強みや弱みはあるにせよ、どの製品を選んでも安心して使えるソリューションとなりました。
その一方で、ハイパーコンバージドインフラを構成するソフトウェア面やハードウェア面では新たなトレンドも登場してきました。ソフトウェア面では「Dockerコンテナ」と「Kubernetes」への対応というトレンドです。
いまDockerコンテナがアプリケーションの新しい実行環境となり、その運用基盤としてKubernetesが事実上の標準になったことは、多くの読者がご存じでしょう。
ハイパーコンバージドインフラはそもそも仮想化統合基盤として登場しました。この仮想化統合基盤の上に、各ベンダーがDockerコンテナとKubernetesの環境を載せ、ハイパーコンバージドインフラをKubernetes基盤としても提供しようとしています。
例えばNutanix社は、独自のKubernetesディストリビューションである「Karbon」を2019年4月にリリースしています。Karbonは同社のハイパーコンバージドシステムの仮想化基盤上にワンクリックで環境を構築でき、管理ツールからKubernetesのクラスタを起動、運用できるのが特長です。
一方、Dell EMC社もハイパーコンバージド製品向けKubernetesソリューションとして「Dell EMC HCI for Kubernetes」を提供し、ハイパーコンバージドの上で容易にKubernetes環境を構築、運用できるようにしています。しかしこれとは別に、同社のグループ企業であるVMware社の仮想化ハイパーバイザー「vSphere」そのものが、内部にKubernetesを統合する「Project Pacific」を発表し、2020年3月にはそれを実現する「vSphere 7」のリリースが発表されました。
Dell EMC社のハイパーコンバージド製品群は、当然ながら仮想化ハイパーバイザーとしてvSphereを採用しているため、今後はこのvSphere 7とそれに統合されたKubernetesソリューションも、ハイパーコンバージド製品のうえで提供されていくことでしょう。