QLCからPLCへの流れ

100層を超える高密度3D NANDの量産が本格化

フラッシュメモリとその応用に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」が2020年11月10日~12日に開催された。FMSは2019年まで、毎年8月上旬あるいは8月中旬に米国カリフォルニア州サンタクララで実施されてきた。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な大流行(パンデミック)による影響で、2020年のFMS(FMS 2020)は開催時期が3カ月ほど延期されるとともに、バーチャルイベントとして開催された。

現世代の「128層」から次世代は「176層」へと高層化

2021年の後半までに、全ての大手ベンダーは100層(ワード線の積層数)を超える3D NANDフラッシュの量産を立ち上げるとアナウンスしている。112層、128層、144層などの積層数を実現した超高層3D NANDフラッシュだ(前々回に詳しい)。現世代をひとくくりにすると「128層(128L)」世代と呼べる。

 次世代は「176層(176L)」というのが業界の共通認識になりつつある。メモリセルアレイの記憶密度は128層に比べ、1.3倍強に増える。もちろん実際には176層だけというわけではない。NANDフラッシュメーカーは製造コストや歩留まり、性能などを勘案して具体的な積層数を決めることになる。

 新世代が登場する周期は1年(12カ月)から2年(24カ月)、標準では1年半(18カ月)である。176層のさらに先は、商業的に可能な積層数としては256層(256L)が見えている。

メモリセルのデータ記憶技術には、フローティングゲート技術とチャージトラップ技術がある。大手メーカーのほとんどはチャージトラップ技術を採用している。フローティングゲート技術を唯一採用しているIntelは、SK hynixに3D NANDフラッシュ事業を売却することが正式に決まった。SK hynixはフローティングゲート技術で今後2世代から3世代は開発を継続すると表明しているものの、同社がフローティングゲート技術に見切りをつける事態は覚悟しておく必要がある。

2020年代半ばにはQLC方式の3D NANDフラッシュが主流に

 記憶密度を高める手法にはワード線(メモリセル)の積層数を増やす「高層化」のほかに、1個のメモリセルに複数のデータを記憶する「多値化」がある。3D NANDフラッシュは、1個のメモリセルに3ビットを記憶する「TLC(Triple Level Cell)」技術で本格的な商業生産が始まった。現在もTLC方式が3D NANDフラッシュの主流である。

 次世代の多値記憶技術は、1個のメモリセルに4ビットを記憶する「QLC(Quadruple Level Cell)」技術であり、2018年に商業生産が始まっている。理論的にはメモリセルアレイの記憶密度をTLCに比べて1.33倍にできる。記憶容量当たりの製造コストでは25%下がることになる。ただし実際には設計とテストのオーバーヘッドがあるので、製造コストの低減は20%~23%にとどまる。

QLC方式の3D NANDフラッシュは、性能では明らかにTLC方式に比べて劣る。製品が市場に投入された当初は、ユーザーから不満が相次いだ。しかし過去にプレーナーNANDフラッシュでMLC(Multi-Level Cell、2ビット/セル)方式からTLC方式へと移行した歴史が、QLC方式でも繰り返されるとみる。QLC方式NANDフラッシュ技術とキャッシュ技術、コントローラー技術の改良が進むとともに、ストレージの性能は向上する。一方でユーザーはQLC方式NANDフラッシュの扱いに慣れ、許容範囲が広くなる。

 おおよそ7年~8年がかかるものの、ビット換算ではいずれQLC方式が主流になるだろう。2021年にはビット換算でNANDフラッシュの15%前後をQLC方式が占める。2025年以降にはQLC方式がビット換算で50%前後を占めるようになると予測する。さらにその先には、1個のメモリセルに5ビットを記憶する「PLC(Penta Level Cell)」技術が控えている。