サーキュラー・エコノミーの事例分析

アクセンチュアのサーキュラー・エコノミーのビジネス類型によれば、ビジネスの現場に適用して経済的な効果を上げるには、実用レベルのビジネスモデルに落とし込む必要があるという。実際に、同社では革新的な方法で資源効率性を向上させている120社以上の企業を分析し、ビジネスモデルの5つの類型を特定している。

再生型サプライ:繰り返し再生し続ける100%再生/リサイクルが可能な、あるいは生物分解が可能な原材料を用いる。

回収とリサイクル:これまで廃棄物と見なされてきたあらゆるものを、他の用途に活用することを前提とした生産/消費システムを構築する。

製品寿命の延長:製品を回収し保守と改良することで、寿命を延長し新たな価値を付与する。

シェアリング・プラットフォーム:Airbnb(エアビーアンドビー)やLyft(リフト)のようなビジネス・モデル。使用していない製品の貸し借り、共有、交換によって、より効率的な製品/サービスの利用を可能にする。

サービスとしての製品(Product as a Service): 製品/サービスを利用した分だけ支払うモデル。 どれだけの量を販売するかよりも、顧客への製品/サービスの提供がもたらす成果を重視する。

ここで、米国ストレージ専業メーカーであるPure Storage inc,社について彼らのビジネスモデルをざっくり分析してみたいと思う。同社は最近、Gartner社Magic QuadrantのStorage比較で、Leaderのポジションを授与されている。これは同社のビジネスモデルの秀逸さを示す一つの事例かと考えられる。

Pure Storage社のケース分析

再生型サプライ:同社製品は、EUの主要企業、US S&P500社や、日本でも大手の企業に採用されている。これらの市場における多くの企業は、RoHSなどいわゆる環境要件にシビアな顧客であり、再生品、リサイクル、環境保護を調達要件に必須としていることが多い。SDGという観点で先行しているEU市場へのビジネスを遂行する上では、再生型のサプライは重要なファクターである。同社のEnvironmental Complianceでコミットメントを提示している。

回収とリサイクル:同社では、EVERGREENと呼ばれる永久保守を訴求している。ストレージ製品は他のIT同様に、製品寿命が存在するが、同社では保守プログラムで定期的に主要部品の交換を実施している。結果、これまで除却後、廃棄物と見なされてきたあらゆるものを、他の用途に活用することを前提とした生産/消費システムを構築していることがわかる。

製品寿命の延長:まさに、EVERGREEN保守プログラムが該当する。対象製品を回収し保守と改良することで、寿命を延長し新たな価値を付与していくというビジネスモデルである。同社製品がSoftwareにコアコンピタンスを見出し、汎用製品をモジュール化することでこのビジネスを成し遂げている点が興味深い。

シェアリング・プラットフォーム:最近同社では、Pure as a Serviceと呼ばれる会計基準に準拠したサービス提供ビジネスを展開している。IFRSによれば、リースではオフバランスが不可能なケースが多く、当該サービスはモノをサービス化した典型的なシェアリング・プラットフォームではないだろうか?実際、リースは以下の特徴から実質、対象顧客による一社支配が前提であった。

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区分は廃止

数字基準によって、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類するという従来のリース取引の区分がなくなる。これまでは、リース取引のうち数値基準以上のものをオンバランス処理(=資産計上)としてきました。しかし、まずリースの判断基準そのものが新しくなった。
そして新基準でリースと判断されたものに、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区別はなく、原則として全てのリースがオンバランス処理(=資産計上)となる。言い換えると、これまでは「売買か賃貸か」でオンバランスとオフバランスが判断されていたところが、今後は「リースか否か」がそれに代わるということになる。

ただし例外として、少額なリース取引や短期リース取引は、新基準のリースに該当してもオフバランス処理(=資産計上しない処理)が認められる。また、この処理はあくまで借り手側の改正。そのため、貸し手側はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分で会計処理を継続することになる。

新しいリースは「使用権」と「支配」がポイント

リースか否かを識別する新基準では、リースの対象となる事業用設備の「使用権」をもとに判断される。使用権については、その対象物の「支配」という概念が基準です。また、新リース会計基準では、リースに該当するものは形式上の契約にこだわらないとしている。
このことから、これまでリースと判断してこなかった賃貸借契約も、新基準では会計上のリースに該当する可能性が高い。

サービスとしての製品(Product as a Service): Pure as a Serviceは、まさに、製品/サービスを利用した分だけ支払うモデル。 顧客への製品/サービスの提供をGB単価でストレージサービスを提供するビジネスモデルである。

今後、多くの業界ではカスタマーエクスペリエンスとLTVの向上から、サブスクリプション化へのビジネスシフトが重要となってきているが、この5つの軸で自社のビジネスを俯瞰し、再定義することが重要だと思う。