どのストレージ・プロトコルを選択するか?が、VMware vSphereを用いた仮想化基盤を構築する際の大きなポイントの一つだと思う。
そこで、各ストレージ・プロトコルについて概説して、最適な仮想化環境を構築する一助になればと思う・
Fiber Channel (FC)
長所:
・低レイテンシ・タイム(ノンIPベースのストレージ・プロトコール)
・高信頼性
・VMFS (Virtual Machine File System)のサポートとVVOLをサポート
短所:
・専用HBA(host bus adapter)が必要
・SAN(storage-area network )スイッチとHBAが必要となり高価
・管理(SANスイッチ、ゾーニングなど)に負荷はかかる
FCOE (Fiber Channel over Ethernet)
長所:
・同一のネットワーク上のストレージと他のネットワークトラフィックを集合させる能力
・イーサネット上でロスレス(損失のない)ストレージ・プロトコルを提供するためのデータセンター・ブリッジングを活用する能力
・VMFSのサポートとVVOLをサポート
短所:
・信頼性の問題
・最低10 GbEのロスレス・ネットワーク・インフラが必要
・ルーティングが不可
・トラブルシュートが非常に困難
iSCSI (Internet Small Computer Systems Interface)
長所:
・信頼性が高い
・安価
・現状のネットワーク・コンポーネントが利用可能
・vSphereのネイティブなiSCSIソフト・アダプタが利用可能
・MPIO(multipath I/O)ロード・バランシングが利用可能
・VMFSをサポートとVVOLをサポート
短所:
・IPベースのストレージ・プロトコールの為に高レイテンシの可能性
・iSCSIポート・バインディングを使用している時はルーティングが不可
・iSCSIソフト・アダプタを使用した場合にCPUレイテンシが高くなります
・セキュリティの懸念
NFS (Network File System)
長所:
・高信頼性
・安価
・現状のネットワーク・コンポーネントが利用可能
・NAS機能でSnapshotからfile単位でリストアが可能
・データストアの拡張・縮小が容易
短所:
・シングル・セッション接続、MPIOロード・バランシングの利用不可
・セキュリティの懸念
・VMFSの非サポートととVVOLも非サポート
もしVMFSの使用が必修であれば選択はブロック・ベースのプロトコル(FC, FCOE, iSCSI)になります。そうでなければファイル・ベースのプロトコル(NFS)を使用できます。もしFCベースを使用した時のコストを削減するためにIP ベースのストレージ・プロトコルを使用する時はiSCSIとNFSの選択になります。もしロスレスでノンIPベースのストレージを選択するのであれば、選択はFCとFCOEになります。しかしユーザの環境がFCインフラ(SANスイッチ、FC SAN、サーバでのFCアダプタ)が無く、予算も厳しいようであれば現状のネットワーク・インフラを使用したiSCSI(ブロック)またはNFS(ファイル)を使用したIPベースが最適になります。
最近の新興ストレージベンダーは、重複排除・圧縮機能のほか、vSphereの各種APIもサポートしたiSCSIベースのブロックストレージを提供しており、NFSであれば「ファイル単位でリストアが可能」な点、iSCSIであれば、汎用バックアップサーバを介して、ファイル単位のリストアは可能になるが、少しコスト高となってしまう。一方で、Software Defined Datacenterを実現するには、vSphere側からストレージを制御するという観点で、ブロックストレージであるiSCSIが望ましいと思う。VVOLも枯れてくると思うし、何より性能面、対障害性、そして、異常時におけるトラブルシューティングがNFSより抜群に優れていると思う。