初めてNVMeストレージを選ぶときに気を付けたい4つのポイント

NVMeストレージアレイを初めて選ぶに当たって、自社のパフォーマンスニーズと予算に最も見合ったシステムを入手するには、4つの基本導入オプションを理解することが重要になる。

1.SASの置き換え

 NVMeは、PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)接続を使用し、フラッシュストレージのパフォーマンスを向上させる。そのためSAS接続型のドライブをNVMe接続型のドライブに置き換えるのが、最も一般的な導入方法になる。NVMeベースのシステムを作成するのは難しくない。それは、大半のオールフラッシュアレイ(AFA)のソフトウェアがLinuxカーネル上で実行され、そのLinuxがNVMeをネイティブにサポートするためだ。

 だが、NVMeへの切り替えは、コンピューティング処理に影響する可能性がある。SASからNVMeに置き換える手法を選択したベンダーは、NVMeを生かせるように自社システムのCPU性能を向上させなければならない。高価なNVMeドライブと高性能のCPUが必要になるため、NVMeベースのAFAはSASベースのシステムに比べて高価になる。

 SASフラッシュをNVMeフラッシュに置き換えるだけでは、システム内部の相互作用のパフォーマンス向上には限界がある。一般に、外部接続にはファイバーチャネル(FC)か、昔ながらのイーサネットが依然として使用されている。そのため、NVMeストレージアレイから外部に送り出されたデータは、再びSCSIの遅延の影響を受ける。とはいえ、多くの企業ではパフォーマンスが向上する。特にSASベースのAFAで大量のI/O(入出力)を処理している場合はその向上が顕著になる。

2.ハイブリッドアレイ

 フラッシュとHDDが混在したものがハイブリッドアレイだ。このようなシステムでは、コストを低く抑えながら、AFAとほぼ同等のパフォーマンスが得られる。ただし、フラッシュストレージ領域が大きく、HDD領域からのアクセスを最小限に抑えることが前提となる。ハイブリッドシステムの問題は、フラッシュとHDDとのパフォーマンスの差が大き過ぎる点だ。そのため、フラッシュに問題が起きると、ユーザーが認識できるほどパフォーマンスが低下する恐れがある。

 このようなハイブリッドシステムでは、NVMeフラッシュと高密度のSASフラッシュを統合しているが、コストを抑えるためにNVMe領域のサイズを制限するのが一般的だ。その際、最もアクティブなデータセグメントを格納できるだけの大きさがNVMe領域には必要だ。このサイズを小さくすれば、高いCPU性能は不要となる。2つのフラッシュテクノロジーを組み合わせることで、パフォーマンスへの影響が目立たなくなる。

 SASフラッシュは高速だが、NVMeほどではない。多くの企業は、ハイエンドデータベースやビッグデータ分析処理のようなシステム用途に合わせて、NVMeフラッシュ層のサイズを継続的に増やさなければならないことに気付くだろう。

3.スケールアウトシステム

 スケールアウトシステムでも、NVMeのメリットを得られる。従来のIP経由のノード間相互接続では遅延が発生する。NVMe-oFは、内部ストレージの速度でノード間通信を可能にし、クラスタノード同士が内部相互接続されているかのように動作する。こうした遅延の削減により、スケールアウト(拡張性を持つ)システムでは、ストレージI/Oの遅延の影響を受けずに、さらなる拡張が可能になる。

4.エンドツーエンドのNVMe

 エンドツーエンドのNVMe接続により、アプリケーションは、DAS(サーバとストレージを直接接続する方式)とほぼ同じ速度と遅延でストレージと通信できる。

 この手法の導入を検討する企業は、新しいNVMeストレージアレイをインストールするだけではなく、自社のネットワークもアップグレードする必要がある。ただし、ほとんどのFCスイッチとイーサネットネットワークはNVMeと従来型のSCSIベースのプロトコルを同時にサポートする。ネットワークを交換しなければならない企業は多くないだろう。ネットワークカードとホストバスアダプターにも同じことがいえる。

 エンドツーエンドのNVMeシステムを提供するベンダーの大半は、スタートアップ企業だ。これらのベンダーは、購入後に設定変更が可能な集積回路のField-Programmable Gate Array(FPGA)を利用したり、ストレージソフトウェア処理をオフロードする機能を利用したりすることで、自社のストレージシステムがNVMeのボトルネックにならないようにしている。エンドツーエンドのNVMeシステムがターゲットにするのはAI(人工知能)や機械学習のシステムだ。このようなシステムには、大量のI/Oを処理するエンドツーエンドのNVMeシステムが効果を発揮する。

最適なNVMeストレージアレイの選択

 重要なのは、自社で必要なパフォーマンスの程度だ。NVMeのオプションは全て遅延を減らすことでフラッシュアレイのパフォーマンス向上を確保している。問題は、多くの企業がこれまで以上に高いパフォーマンスの向上を必要とする可能性があり、そのパフォーマンスのコストが高くなる点だ。

 ストレージインフラは、企業が必要とする以上のパフォーマンスを提供できるレベルに近づいている。IT予算の範囲内で入手可能な最速のシステムを購入するだけでは賢明とはいえない状況だ。NVMeストレージアレイのオプションを理解するだけでなく、今後5年間のI/Oの最大要件を予測し、そのニーズに最適なアレイを選択する。そうすれば、必要なパフォーマンスを従来のSASベースのシステムで提供できることが分かり、膨大な資金を節約できるかもしれない。