「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)を導入する場合、NVMeの接続方式(ファブリック)には幾つか選択がある。ストレージ専門家によく知られたファイバーチャネルネットワークを使用する「NVMe over Fibre Channel」の他に「RDMA over Converged Ethernet」(RoCE)や「Internet Wide Area RDMA Protocol」(iWARP)などリモートダイレクトメモリアクセス(RDMA)を利用するものがある。
NVMeはデータセンターなどの非常に高いパフォーマンスが求められる場所で利用され、一般的には専用ハードウェアが必要になる。専用のネットワークインタフェースカード(NIC)やホストバスアダプター(HBA)が不要なため、企業はDellの「PowerMax」やNetAppの「All-Flash FAS」などのアレイにファイバーチャネル(FC)経由でNVMe型ストレージにアクセスするだろう。
RDMAに注目
信頼性の高いRoCEやiWARPは、理論上、特殊な構成がなくても利用できる。だが、RoCEのベンダーはいまだに、ユーザーがプライオリティフロー制御(PFC)と明示的輻輳(ふくそう)通知(ECN)を有効にして「パケットの取りこぼしを減らす」ことを勧めている。PFCとECNを有効にするには、幾つか構成作業が必要になる。
RDMAによる処理分散(オフロード)は、遅延やCPU使用率を減らす。
だが、Intelの「Xeon」プロセッサの処理能力が上がるにつれ、NVMeファブリックは、iSCSIのユーザーが経てきたのと同じパターンをたどると考えられる。iSCSIの初期は、iSCSI HBAとTCPオフロードエンジンカードが必要だった。だが、CPUの処理能力が上がるにつれ、OSとハイパーバイザー(仮想化ソフトウェア)に組み込まれた「イニシエーター」を活用すれば、サーバCPUのほんの一部を使用するだけで、十分なパフォーマンスが得られることにユーザーが気付いた。多くのNICやコンバージドネットワークアダプターがiSCSIとTCPのオフロードを可能にしているが、本稿執筆時点ではこれを利用しているユーザーは見当たらない。
「RDMA over Converged Ethernet」という名称の“Converged Ethernet”の部分は「データセンターブリッジング(DCB:Data Center Bridging)と同様に、イーサネットからのパケットの取りこぼしを減らすことで『FC over Ethernet』を可能にする」ところから来ている。DCBスイッチの設定は、iSCSI SANの「ジャンボフレーム」(転送するデータ単位を大きくして通信を効率化する機能)と似たところがある。どちらも高いパフォーマンスを得るために、ネットワーク管理者がポートごとに幾つかパラメーターを適切に設定する必要がある。構成が正しくないデバイスやポートがあると問題を生じやすくなる。ネットワークチームが新しいサーバの2つのポートを構成するのを2週間も待たなければならないとしたら、システム管理者は恐らくTCPへの移行を決意するだろう。だが、ネットワークの自動化を提供するサービスベンダーなら簡単に対処できる。
NVMe-oFは単なるSANの高速版ではない。どのオプションを選んでも、NVMeファブリックは速度を上げる以上のメリットがある。