「ストレージクラスメモリ」は不揮発性で永続的にデータを保持でき、コンピュータのメインメモリに利用される「DRAM」(Dynamic Random Access Memory)に匹敵するデータ読み書き速度を実現したメモリだ。メインメモリとストレージの双方に使えるストレージクラスメモリは、「抵抗変化型メモリ」(ReRAM:Resistive Random Access Memory)だけでなく、幾つかの種類の技術や製品が開発されている。
磁気抵抗メモリ
「磁気抵抗メモリ」(MRAM)は、データの保存に磁化(物体が磁気を帯びること)の状態を利用するストレージクラスメモリだ。DRAMやNAND型フラッシュメモリはメモリセル(データ読み書きの最小単位である素子)に電荷を蓄積することでデータを記録する技術を採用しており、それとは仕組みが異なる。MRAMはDRAMよりもデータ読み書きが高速な「SRAM」(Static Random Access Memory)とほぼ同等の速度を実現できる。当然、NAND型フラッシュメモリの速度を大きく上回る。揮発性のDRAMやSRAMと異なり、電源供給がなくてもデータを失うことはない。
MRAMはメモリセルに、2つの磁性体層の間に絶縁体層を挟み込んだ「磁気トンネル接合」(MTJ)という構造を持つ素子を用いる。磁性体の磁化方向(N極とS極)が2層ともそろっている状態が「0」、不ぞろいな状態が「1」を表す。
MRAMの利点と課題
DRAMと比べた場合のMRAMの利点として、比較的消費電力が低いことやデータ読み書きの処理を高速に実行できることなどがある。MRAMはメインメモリからストレージまで幅広い用途に応用できる可能性がある。NAND型フラッシュメモリとは異なりデータの読み書きでメモリセルは消耗せず、物質そのものが劣化するまで利用できる。
単体(スタンドアロン)のメモリとしてMRAMを製造しているベンダーとしては、Everspin Technologiesが知られている。同社はもともと「Toggle」という技術をベースにした単体のMRAMを開発・製造していた。それに加えて半導体製造を手掛けるGLOBALFOUNDRIESとの提携によって「埋め込みMRAM」も開発し、提供できる体制になった。埋め込みMRAMは標準的なCMOS(相補型金属酸化膜半導体)を使用した電子回路に組み込むことができ、DRAMやSRAM、NAND型フラッシュメモリの代わりになる。2019年3月にはSamsung Electronicsも埋め込みMRAMの量産開始を発表した。
MRAMの課題は大容量化が難しい点だ。MRAMはメモリセルにデータを読み書きする際、磁界を発生させるための電流を必要とする。この際の消費電力は、大容量化を進めるほど大きくなってしまうのだ。